硝子の挿話
第15章 暗夜
しなやかな成長を見せ始めたティアの未来を願い、心を込めて呟いた応援の言葉。それは―――ティアの、その後に響き続けた一言。
「ありがとうなのです!」
「ティア様に助力出来る己が、とても誇らしいですよ」
淡く笑って見せる。蛹を脱ぎ捨てて、風に羽を晒していた蝶が大空へ飛び立つ。
そのまま振り返らずに出て行く背中を、サイバスは深く頭を下げて見送った。
ゆっくりと絡みつく暗黒は、運命という車輪に触れる。止まっていた世界は、まだ誰も知らない場所で動き出そうとしていた。
まだ、誰も変化を始めた星の動きを知らない。空には少し晴れ間も見え出し、海上は静かな凪ぎを迎えている。
破滅を知らせる音は、耳では捉えられない。
禊から出てすぐだった。
「?」
自分の中に異変を感じたのは、今日の衣装を着衣しながら、虫が飛んでいるのかと周囲を伺うが、この場所に虫除けの香が焚かれていたし、肌にもたっぷりと塗られている。きょろきょろと周囲を見るが、やはり視界では確認できない。
「ありがとうなのです!」
「ティア様に助力出来る己が、とても誇らしいですよ」
淡く笑って見せる。蛹を脱ぎ捨てて、風に羽を晒していた蝶が大空へ飛び立つ。
そのまま振り返らずに出て行く背中を、サイバスは深く頭を下げて見送った。
ゆっくりと絡みつく暗黒は、運命という車輪に触れる。止まっていた世界は、まだ誰も知らない場所で動き出そうとしていた。
まだ、誰も変化を始めた星の動きを知らない。空には少し晴れ間も見え出し、海上は静かな凪ぎを迎えている。
破滅を知らせる音は、耳では捉えられない。
禊から出てすぐだった。
「?」
自分の中に異変を感じたのは、今日の衣装を着衣しながら、虫が飛んでいるのかと周囲を伺うが、この場所に虫除けの香が焚かれていたし、肌にもたっぷりと塗られている。きょろきょろと周囲を見るが、やはり視界では確認できない。