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硝子の挿話

第16章 素懐

 金のドアを開けると、内部も金や銀で覆われ、天井は全て象牙で出来ている。
 豪奢な造りは、神の威厳を表現していた。

 金は太陽。
 銀は月。
 象牙は星。
 錫は夜。

 そう意味がつけられおり、各神殿や祠堂なども、そのような意味合いを込めて造られていた。
「………」
 四年に一度の星祭は、静かに始まりを告げた。
 一同はティアを残し、それぞれの来賓席へ腰を下ろす。今回は前例にない祭りでもあり、本来であれば大司祭や司祭主などの席も設けられ、広い講堂には人の熱が篭る筈であった。





 全員が腰を落ち着けると、舞台を照らす青銅鏡以外が、下に伏せられる。そうすることでより鮮やかな舞台を、見ることが出来る。
 太陽を表現した太鼓が鳴り、月を表現した琴が続く。
 水のハープの音が走りだし、講堂の中心にティアが立つ。

 指先に緊張が走る。

 心音が張り詰めた音を奏でているが、恐ろしいと緊張する訳ではなく。―――楽しい。
 側に知らぬ顔で楽器を構え、ユウリヤがティアの為に奏でてくれていた。
 一瞬だけ視線を走らせるが、それはあまりにも淡く、誰の目にも留まることはなかった。
 緩やかな音は平坦に綴られていく。まだ命が息吹を上げない。冷たくて寂しさを辿り、大気が生まれて雨が降る。ハープの音が強く流れ、強く細かに叩かれる雷呼を太鼓が示す。
 ゆっくりと両手を広げる。青銅鏡で集められる光は、全てティアに注がれていた。
 神子の祭り衣装が広がり、飾られたリングが砂塵を巻く風の音をだす。

 優美な音に抱かれ、柔らかい肢体は物語を体言を始めた。



太陽に祈り、

月に願い、

水に抱かれ、

この星が誕生した。

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