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硝子の挿話

第16章 素懐

 はじまりから綴られる歴史を彩る。芽吹く命達を祝い喜びが捧げられた。
 至高の感謝を贈る。
 壮大な歴史を舞いと音で体現する術は、舞台を見ている立場にも興奮を与える。一目見ようと講堂の表には、両手を組んでティアの祈りに同調し、天へ祈りを強く捧げていた。
 暗雲が渦巻く、今回の星祭には二重に掛けられた願いが、沢山の民衆の胸にあるのだ。
 天へ伝える為に、ティアの舞いは力強く躍動する。元々身体を動かすのは、室内で一人篭って祈るより好きだった。
 昔からそうだ。ティアは室内よりも外へ、海へと出ていた。

 自由を感じる、風。

 腕輪に飾られた鈴が、揺れる度に音を出していた。
 ユウリヤ達楽師が奏でる音も、願いや希望を乗せて、天へと流れていく。
 平穏にただ、静かに毎日の移り変わりを喜び、泣いて、笑って、怒って繰り返していく。

 それでも同じ日は二度とない。
 繋いでいく毎日と、繋がれていく明日。今日は昨日と明日を繋ぎ日々が生まれる。―――欠けることなく過ぎていく世界。

 この先へと繋いでいく日々が終わらないように、祈りと願いを全身で捧げる。
 漆黒に染まろうとする空を、陽射しで貫いて欲しい。
 優しく、時に厳しい光はそれでも明るさを伝えてくれる。

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