テキストサイズ

硝子の挿話

第16章 素懐

「?」
「あのね、お兄ちゃんとハクレイちゃん…ずっとね、ボタンを掛け違えていたの」
 間にある言葉は、なんとなく察することが出来る。一時期よくハクレイはティアを尋ねてくれていたが、とても辛そうにしていたのが記憶に残っていた。

「それでとても嬉しそうですのね」

 聞くとこっくりと、深く頷きで返してくれる。小さいながら大切な二人を心配して、胸を痛ませていたのだ。
「大好き同志なのに、おかしいって思ったの…」
「お二人は親友でもいらっしゃいますしね」
 もしかして知っているのだろうか。ティアが探るように言うと、やはり知っているらしい眼差しがティアを見た。

「お兄ちゃんも、誤魔化そうとしたけど………私、赤ちゃんの頃から知っていたよ」
「………赤さんの時、からですか?」

 やはりユラの能力(ちから)は、神子の限界を超越している。間違いなく星見としての発露だと確信した。
「ティア様にならお話しても大丈夫かな…って、聞いて欲しいことがあったの」
 そう言って顔を上げるユラは、幼い少女が持つ顔ではなかった。
 迫力を前にティアは、高鳴り始めた心音に指先が触れた。
「遠い昔に生きていた記憶が、あるの………だから大人の会話術も少し覚えているの、………これって、どうしてかご存知?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ