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硝子の挿話

第19章 短編~現世編 /晴れた空の下で

「お元気そうでなによりなのです」
 にこっと笑った千尋に、由紀が苦笑してそっぽを遠い瞳に映す。
「どうかされたのですか?」
「うん…? ……ちょとね、難攻不落な城へと攻め込むにはどうしたらいいのかなって」

「難攻不落……ゲームですか?」
「難攻不落っぽいかな? …ゲームじゃないけどね」

 苦笑して言う由紀に、きょとんと瞳をさせたままの千尋の頭を優しく撫でる。
 意味が分からない千尋に、由紀は苦笑していいんだよと頭を撫でた。
 千尋より二つ上の由紀は大人に見える。
「今日は、ちょっと真昼兄さんに相談したいことがあったのと、唯が千尋に会いたいっていうから連れてきたんだ」
 今も下を見ながら歩いている同年代の子よりも、身体の小さい唯を見た。

「相談?…」 

 きょとんとした千尋に由紀は言った。

「ん…最近、気になる子がいるんだけどね…ライバルが多くて…女の子が喜びそうなプレゼントって何だろうって………真昼兄さんそういうの詳しそうだから」

 千尋は素直に驚いた。
 由紀は優しくて、女の子にモテるのは知っていたが、その方面には疎く。また興味もなかったように見えていたからだ。

「あ、やっぱり驚いてる?」
「ええ…ちょっとびっくりです。どのような女の子なのですか?」

 由紀が興味を持つような女の子とは、どんな感じの女の子なのだろう。微笑ましい気持ちで聞いた千尋に、由紀は小さく笑って教えてくれた。

「バイト先で知り合ったんだ。…最初は気の合う男友達だと思ってたんだけど……」

「え?男友達ってことはですね…ボーイッシュな感じなのですか?」
「いや、男として働いているから外見は男だよ」
「はひ?」

 ますます意味が分からなくて、きょととんとした瞳を向ける千尋に、由紀は苦笑して続きを言った。
「僕がしているバイトは、千尋も知っているだろう?」
 こくっと頷くのを確認すると、更に続けた。
 由紀のバイトは給仕とかの仕事で、母親が唯を生んですぐに亡くなったこともあり、ある程度割がいい夜の仕事をしているのだ。

「ああ!!」 

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