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硝子の挿話

第28章 埋没した色彩

「あんがと…大切にする…」

高鳴る胸の鼓動は強く生を刻む。ほんの少しだけ離れる間際、微かに唇を頬に当てた。

強く鳴る心臓が緊張と愛しさの間で音を派手に刻む。触れた二つの宝物を見るハクレイの眼差しを見て言葉を止めたユア。きょとんとした表情に戻るとユアは軽く咳払いをして、改めて笑みを見せて聞く。

「今日の夜おいでよ…三人でお祝いしよう」

その言葉は望む強さが強く。ハクレイは高鳴る胸に自ら氷を抱き締める。敏感なユアに気付かせないように片手を後頭部に回して掻く。

「それがな…仕事があって行けないんだよ~」

わざとらしく泣き真似をし、さりげなく抱きついた。―――顔を、ユア見られないようにする為に…。

「ひでぇだろ?俺の誕生日なのによ~」
「今の今まで忘れてたのに?」

くすっと笑うユアの肩口に額を押し当ててスリスリと甘える。…本当は抱きつきたい。
そんな真似など出来はしないけど…。
ハクレイはユアやユラに見られていない間だけ、本当の素顔に戻る。いつもの明るく物怖じしない堂々とした男の表情から、繊細で張り詰めた
涙を流していてもおかしくないぐらいに眉をしかめていた。

「そっか…大変だね」

変わらない優しい手が、ハクレイの背中を撫でる。



《やべっ》





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