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　楽園世界は幻に消えた……。



　誰もが憧れた世界は消え去り、その終末は共通する世界の洪水伝説のひとつとなり、語り継がれていく。
　太古に存在した大陸。
　栄えた文明。
　劇的に滅んだ。
　ヘラクレスの向こう側に存在したと言われる《アトランティス》…。





†



　夢を見た。…はっきりとは思い出せない、夢を。軽く汗ばんだ掌が震えている。
　少女の名前は千道千尋。
　私立の女子高に通う一年生。彼女は子供の頃から続く異様な風景を瞼の奥に閉じ込めていた。
「……」
　言葉に出来ない思考の寄せ集めに、千尋はこぼれていく雫を、まだ震える指先で拭う。長い黒髪は腰の下までさらりと流れ、白い肌にまとわりついていた。
　全体的に華奢な肢体には、白い生地に小さな花が、描かれているパジャマの裾を握り、自分自身を抱き締めるように膝を抱えた。―――ひとしきり荒波のように揺れる感情を、唇を咬んでやりすごす。