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硝子の挿話

第4章 蜜月

 《姫神子》として身分が、肩に重くのしかかり。カリスマとして、偏った愛を示してはならない規則があり。古くは自然を愛し、自然の鼓動に耳を傾け、声に恵みを授かり、広がる自然を尊ぶ。自然の《気》を宿し、破邪を唱え、世界の安定を具現化するのが役目だ。
「優しい…愛しさを意味に、もつのが好きです…」
 小さな声で呟く。現在ティアに要求されるのは、王権管理を剥奪することである。それは何も水耀宮だけの話ではない。月空宮も同じだ。神子達は苦しみ守るべき民たちの、重税にもがく彼らから伸ばされる手を眺め、透かすだけの盾でしかない。
 わずかな希望を捨てないで欲しいと、民に祈りを捧げることしか出来ない。………ともすれば、自身さえ失ってしまう危険がないとは言えない。
 縦と横が理不尽に絡みあい、合理の無き崩しだ。
 黒い瘴気に呑み込まれないでいる自信なんて、とっくの昔に消失していた。
 ソレを自分で感じるのが悲しい。ふと自分の気持ちに俯いていたティアを覗き込む。
「…辛気臭い顔するなよ」
「そんなつもりは…」
「いいから………」
 冷たくぶっきらぼうに聞こえる言葉の裏側で、差し出された腕が、柔らかくティアの身体を抱きよせる。





 見た目よりも、筋肉がついているユウリヤの胸に額をおしつけ、白い指先が震えながら、腕にすがりつく。

「今だけ………」
「………ああ」

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