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硝子の挿話

第4章 蜜月

 素直に恋をしている。柔らかいと思える時間を愛しいと感じた。
「傍に居たいです」
 叶うなら、朝も昼も…夜でさえも。止め処なく流れていく時間の流砂に二人。
 強く抱きあい、時間がいっそ止まればいいとさえ思う。
 許されないから、焦がれるのか。許されれば、トキメキは失われてしまうのか。その答えさえ見い出せないまま、ただ押し迫る圧迫感に耐えていた。
 今はこのまま―――瞳を閉じて、寄り添っていたい。

「いつか歌えるかもな…ティアが好きだという唄を。……でも今は諦めてくれ」

 一点をじっと見ている表情は、何かを思いつめているみたいに見えて、低い声で答えるユウリヤを見上げた。
 胸に宿る不安を、咽喉の奥に、もう一度飲み込んだ。今、温もりは隣りにいる。それが幸福だと。これ以上は望んではいけないと。濁った視界の向こう側にユウリアの困惑している顔があった。

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