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硝子の挿話

第4章 蜜月

「地下にオリハルコンと何かの鉱石が埋められているのです………」
 太陽宮の現巫女である女性…サミアは、始終観察される苦痛と居心地の悪さ、逃避したい気持ちなども知り、それらを汲んでくれたのだとティアは思う。二つ、ティア自身が埋めた。
 ユウリヤが引っかかっていた岩場は、その結界がない場所だったので、ユウリヤも違いが分からない。虹水晶を持ち、二人は此処で翌日から逢瀬を重ねていたこともある。
「二人だけの秘密の場所ですよ」
「ああ…」
 秘密の場所―――その言葉に、ユウリヤの動揺が見えた。けれどティアは見てないと目を背けることで、聞かないと決めた。
 動揺するほど強い何かに触れるのは、信頼と愛情を受け取った時に聞かされる話だと思ったから。それが言い訳であったとしても、人ならば誰だって打ち明けられる話と、そうではない話が混在しているのだから。
 寂しいとか、思うことは間違いで聞く意味にはならないとティアは考えていた。





「二人だけの………場所…か…」

 懐かしむように、その言葉を噛み締めて笑う。本人は無自覚だろう―――優しく、慈しみが満ちて柔らかい。
 ティアの横から手を伸ばし、肩を抱いて笑いかける手の甲を不思議なほど無機質な瞳が見た。
 聞いては駄目だ。

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