硝子の挿話
第4章 蜜月
「………好きだよ」
ティアは海岸に瞳を反らす。今は聞きたくないと耳を塞ぐと、ユウリヤの両腕を全身で拒絶した。
「ティアっ!!」
咄嗟に駆けていく後姿を追いかける。更に強くなった雨脚の向こう側では、いつの間に現れたのだろうか。―――イルカの群れが顔を遠くから出していた。
「………ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
繰り返す言葉は、意味の分からない呟きとして、雨に掻き消えていく。途中で何度も途切れた言葉の意味を考える暇も与えずに、近寄った分だけティアは怯えていた。
「キュル…!」
自身さえ拒絶するみたいに震える姿。感情の荒波に揉まれまいと抗う両腕で、自らの肩を押さえて。幼い頃から、悲しいことも嬉しいことも、楽しいことも辛いことも聞いてくれた存在。ユウリヤの前に現れたのは初めてだった。
ティアの目の前にいるイルカのキュル。何処で知るのか、ティアの感情に激しい揺れがあると姿を見せた。
全身を濡らして近寄っていくティアを待ち、静かに覗き込んでいる。ユウリヤの眼前で、広げられる光景は神秘に満ちていた。
雰囲気に飲まれないようにしたいと思うのに、無意識に飲まれているのを感じる。一歩海水に踏み込んだ。
ティアは海岸に瞳を反らす。今は聞きたくないと耳を塞ぐと、ユウリヤの両腕を全身で拒絶した。
「ティアっ!!」
咄嗟に駆けていく後姿を追いかける。更に強くなった雨脚の向こう側では、いつの間に現れたのだろうか。―――イルカの群れが顔を遠くから出していた。
「………ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
繰り返す言葉は、意味の分からない呟きとして、雨に掻き消えていく。途中で何度も途切れた言葉の意味を考える暇も与えずに、近寄った分だけティアは怯えていた。
「キュル…!」
自身さえ拒絶するみたいに震える姿。感情の荒波に揉まれまいと抗う両腕で、自らの肩を押さえて。幼い頃から、悲しいことも嬉しいことも、楽しいことも辛いことも聞いてくれた存在。ユウリヤの前に現れたのは初めてだった。
ティアの目の前にいるイルカのキュル。何処で知るのか、ティアの感情に激しい揺れがあると姿を見せた。
全身を濡らして近寄っていくティアを待ち、静かに覗き込んでいる。ユウリヤの眼前で、広げられる光景は神秘に満ちていた。
雰囲気に飲まれないようにしたいと思うのに、無意識に飲まれているのを感じる。一歩海水に踏み込んだ。