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硝子の挿話

第6章 瓶覗

 苦笑して呟く。万感の思いがティアに見えた。
 何かを変えるのは、どんな些細な事柄であれ衝突や誤解。絡まる鎖をひとつひとつ解くか、千切っていくしかない。それは想像も出来ないぐらい大変なことで辛い。





 だから、そんな泣きそうな目を向けないでくれ。引き寄せて、抱きしめるだけでは足りない気がして居た堪れない気持ちになってくる。抱きしめる手が汗ばんでいたが、心が凍ったみたいで寒かった。
「月空宮でようやく軌道に乗り出した時だった………メイスはとうとう地下水路へと狩り場を移したんだ………」
 膨大な賞金額を、凶悪犯でもないブブルやジーらに掛け、メイスは暗黒遊戯を開始した。

「………」

 その日が訪れるまでの、二年の歳月はユウリヤにとって得がたい経験と、自己成長となった月日。けれど運命は、じわりとじわりと夏の暑さの如く責めはじめたていた。
 月空宮は水辺に囲まれた土地で、水と緑の活性は至る所で見られる。その年は孟夏で、水が不足を初めて起こした年でもあった。

「なんとなく覚えてます」

 当時の記憶はティアにもある。召しだされた最初の仕事でもあったからだ。
 水の溢れた土地として名付けられた水耀宮。その要源泉がひとつ涸れ、人心はパニックに陥りティアは直感で新たな源泉が沸く場所を示したことで事なきを終えた。

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