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硝子の挿話

第6章 瓶覗

 地球は生きているのだと叫んでいる事実。気候が変質を始めたのは、その頃からではなかったか。毎年少しづつ何かに異質さが出ていた。
 水害や地震、水不足や奇病疫病など、全てを並べられるほどの情報を持ってはいないティアだったが、ひとつだけはっきり感じていたとしたら、―――海水温度と南から月空宮への国境もある西海に広がる珊瑚礁。
 毎日ティアは海水に半身を浸している。水耀宮には冬がなく、常夏の太陽が海を大地を照らしているが、温度が上がっている証として珊瑚礁の一部が白化しだしていた。
「………暑さは人に狂気を与えるのかもって思った」
 話が戻ったのを感じて、ティアは思考を止める。身体をくっつけている暑さはあれど、それ以上に何かを互いの体温に求めていた。

 ユウリヤは続きを語りだす。

 その日も大地を貫く陽射しが、窓辺から入り、開けたままの窓から強い日差しが顔に刺さる。陽光の鋭さに思ったよりも早く、寄宿舎での朝を迎えた。
 暑い、と叫んでも仕方ないのだが、思わず口に出てしまうほどの熱量が、起きた瞬間から体力と気力も奪うかに感じた。
「地下水路では怪我人が出たりするほど、攻防は激しくなりだして………俺は組合に顔を出すよりも、ジーやブブルが心配で、地下水路への道をとったんだ」
 語る一言一言に熱が入る。それはやり切れなさかも知れない。

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