硝子の挿話
第1章 夢幻
幻(ゆめ)の正体を掴まない限り、千尋は進展する事の無い感情を持て余し、日々焦燥感に煽れているしかない。
いたたまれない想いが、全身を支配しながら、爛れていく錯覚が襲う。その度自己を何度確認したか分からない。―――己の肩を両手で支えながら、頑な拒絶と向かい合えずに、ただ時が流れ、経つ時刻を待つように、蹲りながら無意識に焦がれていく心と、痛みに耐える精神。
置いていかれた子供のような、黒い疑惑。
支配された、心。
「コレは欝でしょうか?」
千尋は苦笑した。
自分でも自身の感覚を疑っている。幻想だと言い聞かせる度に、切ない苦しさに支配されてしまう。だからこそ完全に空想だと言えず、焦燥は尚もこの身を支配するのだと、彼の幻想がなければもう少し男の子に、感心がいくのかも知れない。
ずっと綴っているノートの端に書き込んだ試行錯誤の言葉。
「自己探究なのです!」
逃避、という言葉が脳裏を霞めたが、それを納得してしまえば、自分の総てを否定しなければならなくなる。
「ロマンチックなのです…」
誰も居ないのに、ほんの少し照れて小声になる。考え方を一つ変えるだけで、人間はこんなに気持ちさえ変わってしまうのだ。前向きも後向きにもなる。その事を千尋なりに考えて、思考を彼方遠くまで飛ばしてく。
いたたまれない想いが、全身を支配しながら、爛れていく錯覚が襲う。その度自己を何度確認したか分からない。―――己の肩を両手で支えながら、頑な拒絶と向かい合えずに、ただ時が流れ、経つ時刻を待つように、蹲りながら無意識に焦がれていく心と、痛みに耐える精神。
置いていかれた子供のような、黒い疑惑。
支配された、心。
「コレは欝でしょうか?」
千尋は苦笑した。
自分でも自身の感覚を疑っている。幻想だと言い聞かせる度に、切ない苦しさに支配されてしまう。だからこそ完全に空想だと言えず、焦燥は尚もこの身を支配するのだと、彼の幻想がなければもう少し男の子に、感心がいくのかも知れない。
ずっと綴っているノートの端に書き込んだ試行錯誤の言葉。
「自己探究なのです!」
逃避、という言葉が脳裏を霞めたが、それを納得してしまえば、自分の総てを否定しなければならなくなる。
「ロマンチックなのです…」
誰も居ないのに、ほんの少し照れて小声になる。考え方を一つ変えるだけで、人間はこんなに気持ちさえ変わってしまうのだ。前向きも後向きにもなる。その事を千尋なりに考えて、思考を彼方遠くまで飛ばしてく。