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あなたを三番目の男のままにすればよかった

第1章 私と彼の安寧な世界


起きたのは、彼のスマートフォンのアラーム音でだった。

「仕事いかなきゃ」

頭をかきながら彼が上体を起こした。んー、と私は彼の腰に絡みつく。

「はよ養って」

「いーや俺はヒモになりたい」

だったらヒモになってよ。
私の今の月収ならできなくはない。けど彼は自由人だ、本当に。
紐になったら、固結びして離れないようにしてやるのに。

「行っちゃうの?」

言うのに、だいぶためらった。

「行っちゃうよ」

いつの間にか下着を履いて立ち上がった彼は、私と同じ目線にしゃがんだ。

そんな顔をしないで。
そう言って私の額にキスをした。

「いってらっしゃい、私は不貞寝するから」

彼の頬に手を当てた。そのまま顔を近づけてキスをした。至近距離で目を合わせて笑いあって、私はがばっと布団をかぶる。

彼が身支度をする音から目を瞑る。
玄関まで行く音がする。


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