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あなたを三番目の男のままにすればよかった

第1章 私と彼の安寧な世界



それがどれくらいだったのか。ただ横断歩道は二回は切り替わっていた。

そのうちに私は諦めて、再び自転車を漕ぎ出し帰路に戻す。ペダルはさっきよりも、重い。

ばかみたいだまったく。
声を掛ける適当な男について行ってしまいたいぐらい、ばかになりたい気分だ。

寝る間もなく、朝8時からは昼の仕事である。午前3時ちょっと過ぎに帰宅して、彼が帰ってくるのを1時間は期待で余裕で待てる。

眠らなくても、帰ってきてくれるなら。あなたの姿こそが夢なのに。

ああ、眠くて眠くて仕方がない。

慣れた2DKは私一人にはとても広い。洗面台に行き顔を洗い、スキンケアもそこそこに、散らかしたまま、一組しかない布団にもぐる。

布団の、端っこに寄って。
彼の入れるぐらいの場所を作って。
朝起きたら寝顔が横にありますようにと祈りながら眠るのが、私の毎日だ。



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