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あなたを三番目の男のままにすればよかった

第1章 私と彼の安寧な世界




私は。私は望んでいるわけじゃないのよ。

笑う。喋る。
華やかな明かりだ。

お客さんの膝に手をおく。それだけの人肌で、私の激情は落ち着く。これほどまでに、灰に近いのだ。

場内指名をもらう。

たったこれだけでいい。

ああ、あなたでいい。
この一人の夜ごと抱かれたい。

そうとさえ思ってしまう私は、きっとキャバクラ嬢に向いていない。

彼はきっと知らない。女に寂しさの穴があることを。
激情で、求める熱で、焦がれることを。それがゆくゆく灰になることさえ、知りはしないのだ。


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