あなたを三番目の男のままにすればよかった
第1章 私と彼の安寧な世界
おはよう、とどちらからともなく口から声が零れた。
窓から注がれる光の表情が違う。もう昼過ぎか。
起きたら彼の腕が私の頭の下にあって、私の両足が彼の左足を挟んでいた。
半分しかお互いに目は開いていない。お互いを向く。お互い同じ布団のなか。お互いの呼吸で、吐いた息が、重なっている。
ああ、ああ。
私からキスをする。彼の舌が入り込んできた。
ああ、幸せだ。目を閉じる。浸る。
このまま時間が経たなければいい。この布団のなかが、この部屋の中が、世界のすべてならいい。
キスの合間に、彼が言葉を落とした。
おはよう。
「うん、おはよ、拓也くん」
応えて胸に顔を埋める。両手が私を包み込む。何もいらない。これだけでいい。