
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第11章 もう一つの恋
マンションのエントランスを抜けたところで尻ポケットに収めたスマホが鳴動する。
「あっ!!ミチコさん?すいません、今…」
『ちょっと、どこで油売ってんの?』
「ごめんごめん。野暮用が長引いちゃって…」
…って、アラフォーのタップタプのお姉さんにズコズコしてたなんて言えねぇ…。
『ペナルティで慎之介くんの奢りね?』
「そんなぁ…いたいけな青少年を苛めないでくださいよぉ。」
『誰がいたいけな青少年よ!?そっちが呼び出したんでしょ?』
そうだった、と、頭を抱えた。
と、いうのも、このミチコさんという女性、筋金入りの腐女子で、男同士の、特に美少年同士の恋愛について語らせると止まらないぐらいの精通ぶりで…
「は?コンドーム?」
「そうよ。エッチの時の必需品でしょ?」
何食わぬ顔でコーヒーをぐいっと飲んだ。
「いやっ…でも、コンドーム、って…」
ミチコさんはしたり顔でため息をつくと、身を乗り出して声を潜めた。
「いるの。例え男同士といえど、ね?」
「はあ…」
何だか分かったよーな分からないよーな…。
「いくら妊娠しないから、って中に出してもいい、ってことにはならないのよ。」
「そうなんスか…」
一瞬、デカイお腹を笑顔で擦る千陽さんを妄想してしまった。
