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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第11章 もう一つの恋



いや…待てよ?



女でも自分のことを「僕」って言うヤツはいるよな?


可愛い顔してその類いか?


千「あの…今の…どういう…?」


「あっ…いや…別に深い意味は…」


千「そうですか。」



徐に、彼は上着のポケットから封筒を目の前に差し出した。



千「修理代と…自転車をピカピカに磨いてくれた分、少しですけど色をつけておきました。」



僕はこれで、と、帰ろうとする彼を呼び止めた。



「そんなもん、いいっすよ?」



封筒から余分に入れたであろうお金を取りだし、彼の手を取り握らせた。



「趣味の延長でやってることだし、部品代だけで。」


千「でも…」



と、押し問答を繰り返しながらさらに押し戻そうとする手を押し返そうとして、



俺はあることに気づいた。



「あの…手、綺麗っすね?」


千「えっ?あっ…」



思わず俺の口をついて出てしまった心の声に、彼は顔を真っ赤にして手を引っ込めてしまった。



「あっ!!す、すいません!初対面の人に俺、何、言ってんだか!?はははっ。」


やべっ!!つい…。



あんな綺麗な手、見たのって…



「彼女」以来、久しぶりだったから…




見かけによらず、指が長くて色が白くて、おまけに手先が器用で…



千「じ、じゃあ、僕はこれで…」



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