
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第11章 もう一つの恋
「ああ…うんめぇ。」
「ふふっ。慎之介、ってばおじさんみたい。」
唸るみたいに言う俺に、すかさず突っ込みをいれる。
「りりちゃん、にーちゃんのお嫁さんになればいいのに。そしたら、毎日りりちゃんのおいしいご飯が食べられるのに…」
「あのな京四郎、凛々子にも選ぶ権利、ってものがあるんだ。」
「そうだぞ?こんな可愛くていい子がこんなヤツの嫁になんて可哀想だろ?」
おいオヤジ、自分の息子捕まえてこんなヤツとはなんだ!?
「あ、おじさん、私、彼氏いるんで大丈夫です。」
「なあんだ。にーちゃん、フラれちゃったのか。」
…フラれるもなにもコクってねえよ。
「あ!!慎之介、シャツ脱いで?」
「あ?」
「ほら、早く!ボタン、つけ直してあげる。」
「いいって!?マジで遅刻すっから。」
でも、無理矢理剥かれて、飯を食い終わる頃には、
「はい、できた。」
「お、おう、悪いな?」
手先が器用な凛々子。
料理や裁縫といった、手を使うことだったらなんでもできた。
しかも、器用なだけじゃなくて、うっかり見惚れるぐらい、綺麗な手の持ち主だった。
