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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第11章 もう一つの恋



「……くん?慎之介くんてばどうしたの?ボーッとして?」




…ヤなこと思い出しちまったな。



「何でもないっス。」


「そう?顔色悪いけど?」


「優しいんスね?ミチ子さんて。」



ミチ子さんに抱きつき大袈裟に頬擦りをすると頭を優しく撫でられた。



「ウフフ。優しいだけじゃないでしょ?」


「おまけにエロくて、美人で。だから今度俺と…」



と、仕事中であることも忘れてミチ子さんとじゃれてると、遠くの方で店長が大きく咳払いをした。



「ゴメンね?慎之介くんも圭太くんもイケメンだけど、私、綺麗な男の子同士がイチャイチャしてるところしか興味ないから。」



やんわり俺を牽制した。



…んなもん、知ってるよ。だからアンタには手ぇ出さねえんだよ?



「そ、そっかあ…やっぱ、ダメかあ…」



おどけて頭を掻きながら店外に目を向けると、自転車に乗ってこちらに向かって走ってくる千陽さんの姿が目に入った。



もう、そんな時間か…。


「じゃあ、ミチ子さん、お名残惜しいけど、俺はこれで?」



千陽さんと顔を合わせまい、と慌てて店の外に飛び出す。



でも、真剣な顔をして自転車を眺め回す千陽さんに遭遇してしまう。



全然気付きませんでした、って体でスルーすることもできず俺は、



思わず声をかけてしまった。



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