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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第2章 マドンナ・ブルー ①



じゃあ、そういうことだから、と、何事もなかったかのように店に戻ろうとする店員の肩を、初めに突っ掛かっていった仲間が掴んでひき止めた。



「おい、待てや、にーちゃん。」



ソイツの言葉に、その店員は鋭い目付きで振り返った。



「そういうことだから、って…そっちからケンカ売っといて俺らに背中見せて逃げんのか?ああ?」


「逃げる、って…仕事に戻るだけだけど?それに、ケンカなんて売ってないし。」



ソイツの手を店員が振り払う。



「子供はタバコを吸っちゃダメだよ、って教えてあげただけだけど?」


「なんだと?もういっぺん、言ってみろ!!」



襟を掴まれ、凄まれる店員。



「おい、もうそのぐらいでいいだろ?」



たまらず俺は仲間の肩を掴んだ。



「警察呼ばれたらマズイし。」



店内をちら、と見ると、


店長らしき人物に指示された女性店員が、慌てて奥に走っていく姿が見えた。



「チッ!!行くぞ!?」



地べたに座ってことの成り行きを見ていた他の仲間たちがズボンをはたきながら立ち上がる。



小走りでその場を立ち去りながら俺は振り返り彼を見た。



彼はしばらく俺らの後ろ姿を見送るように立ち尽くしていたが、



やがて、何事もなかったかのように店内へと戻っていった。

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