ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第12章 薔薇を纏った悪魔
その言葉をどんなつもりで言ったのだろうと、
探るみたいに見つめてくる黒目がちの大きな瞳を思わず見つめ返す。
「そうですが…。」
「ですよね…。」
彼女は形のいい唇の端を感じよく上げて見せたつもりだったんだろうが、
見逃してしまうほど瞬間的にまた、小さな針でチクリと刺すような目を僕に向けた。
気づいた?僕たちのこと?
いや、仮に気付いたとしてもあの笑い方……
余裕の笑み、ってヤツなのか…
例え、あなたが圭太と恋愛関係にあったとしても、所詮は男同士。
この先なんてあるわけないじゃない?
…って、考えすぎか。
向こうで彼女を呼び戻す声に明るく反応する彼女。
「じゃ、圭太、また。」
僕に失礼します、と行儀よくお辞儀をし去って行く。
すると、さっきまで目の前で頭を抱えていた圭太が顔を上げた。
圭「千陽さん、あの……」
「…帰る。」
圭「えっ!?ちょ…」
言葉を遮るように席を立つ。
でも、店外に出た所で圭太に捕まってしまった。
圭「なんか……ごめん。」
痛いぐらいに捕まれた手首。が、
「さっきの人…元カノだよね?」
そう言った途端、ウソみたいにあっさりと手首の拘束が解かれた。