ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第12章 薔薇を纏った悪魔
酷く動揺する自分を見つめる僕の視線から逃れるみたいに向けられる背中。
正直、見たくなかった。
こんなにも分かりやすく動揺する君を。
ねえ、圭太。
どうしてそんなにびくびくしてるの?
一体何に怯えているの?
ねぇ……
「圭太…」
僕に呼ばれて恐る恐る振り返った圭太の唇に僕は…
…圭太の唇にキスをした。
圭「…っ!?ち、千陽さん…」
慌てて僕を引き剥がし辺りを見回す。
「どうして…?別にいいじゃない?見られたって?」
焦っている圭太を無視し、ぶら下がるように両腕で圭太の体を引き寄せまたキスをする。
今度は拒否しなかった。
それもそのはず、
圭太の体が僕の体をちょうど人目から隠すように盾になってくれてるから。
でも、唯一見えるのは、
圭太の逞しい体に纏わりつく僕の手。
圭太の友達の慎之介くんも綺麗だと褒めてくれた僕の手。
あまり自慢出来ることではなかったけど、自分の見た目以上に、女の子に引けをとらないところだ。
「ホテル…行く?」
甘えるように首筋に顔を埋める大きな仔猫に甘く囁くと、
泣きそうな目で僕を見ながら小さく頷いた。