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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第13章 水に挿した一輪



「先生、って恋人いるの?」


「えっ!?ウソ!?マジで?」


「年上?年下?タメ?」


俄に教室内がザワつき始める。



「もしかしてもしかして、まさかの男、とか?」



的を射た言葉に、瞬間背中に冷や水を浴びせられたようになる。



「まっさかぁ?先生がそんなわけないじゃん?」


「でも、先生みたいな美人ならオッケー、って男の人もいるんじゃない?」



バレていないとはいえ、心臓が胸を突き破って飛び出してきそうなぐらいにガンガンと打ち付ける。



「あっ、じゃあ…!!」



一人の女生徒が手をあげた。



止めて……



「いやっ…だから今、授業中…」


「先生のお相手の人、ってこの学校にいますか?」



お願いだからもう……!



「そんな質問には答えられません!お願いだから集中してください!」



はっ、と辺りを見回す。



僕の剣幕に気圧され、皆顔が強張っていた。



「あ…いや…だから…その…」



水を打ったように静まり返る教室内に頭が真っ白になってしまって、どうしたらいいのかが分からない。



「ご、ごめんなさい。大声出したりなんかして?その…授業に集中してほしかったから…つい…。」


京「いや…俺の方こそ。授業に関係ないこと聞いたりして?」



頭を下げる京四郎くんの後ろで、この重苦しい空気の中、一人、手を止めじっとこちらを見つめる一人の女子生徒と目が合った。



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