
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第13章 水に挿した一輪
京四郎くんの機転で何とか切り抜けたものの、生徒の前で取り乱してしまったことに少し落ち込んでいた。
まったく…僕としたことが…。
備品のチェックをしながら大きく息を吐く。それが誰もいない教室ではやけに大きく聞こえて、ちょっと笑ってしまった。
…もう戻ろう。
ポケットから鍵を取りだし、入り口へ向かう。
………。
まただ…。
授業が終わってから、いや、その間中ずっと。
誰かが僕を見ているような…。
もっと、正確に言えばあの女子生徒と目が合う少し前ぐらいから。
いや、違うな。
あの時も誰かに見られてる、と思って顔を上げたら彼女と目が合った。
そう。今も…感じる。
チクチクと刺してくるような感じじゃなくて、舐め回すようなイヤらしい感じでもなく、
まるで、僕がどんな人間なのか観察しているみたいな目で、ジッと。
「もう、次の授業始まってるハズだけど?」
僕の背後に纏わりついていていた気配が、声に反応したようにピクリ、と動く。
そして、ひたひたとこちらに向かって歩いてきて、僕のすぐ後ろで止まった。
「大丈夫です。気分が悪いので保健室に行く、って行ってきたので。」
