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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第2章 マドンナ・ブルー ①



じゃあ、そういうことだから、と、何事もなかったかのように店に戻ろうとすると、初めに突っ掛かってきた男の子が僕の肩を掴んだ。



「おい、待てや、にーちゃん。」



瞬間、僕の背中を冷たい汗が物凄い早さで滑り落ちていった。



だが、ここでも怖い素振りをしちゃいけないと思い、僕は彼を睨み返した。



「そういうことだから、って…そっちからケンカ売っといて俺らに背中見せて逃げんのか?ああ?」


「逃げる、って…仕事に戻るだけだけど?それに、ケンカなんて売ってないし。」



渾身の力で彼の手を振り払った。



「子供はタバコを吸っちゃダメだよ、って教えてあげただけだけど?」


「なんだと?もういっぺん、言ってみろ!!」



平静を装いながらため息混じりでそう言うと、彼の顔色が変わり、スゴい力で襟を掴まれた。が、



「…おい、もうそのぐらいでいいだろ?…警察呼ばれたらマズイし。」



その彼を、さっきタバコを吸っていた彼が制止した。



店内を見ると、



店長に指示された先輩女性店員が慌てて奥に走っていく姿が見えた。



「チッ!!行くぞ!?」



彼の舌打ちを合図に、



地べたに座ってことの成り行きを見ていた他の男の子たちがズボンをはたきながら立ち上がり小走りでその場を立ち去っていった。



…良かった。



襟を掴まれた時は、自分の行動をもっと意識して慎もう、って思ったけど、



また、多分やっちゃうんだろうな?と、思いつつ踵を返した。



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