テキストサイズ

ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第14章 迷宮の中で



「それ…どういう意味なんですか?」


「教師として生徒の悪口を言うようで心苦しいのですが、あまりいい噂を聞かなくて…」


「噂?」


「ええ。あくまで噂なので確かなことは…。と、とにかく二人きりにならないように気を付けた方がいいですよ?」



なるほど…彼女の性癖は知る人ぞ知る、ってことか。



「…分かりました。」



この時僕は単純にそう解釈したけれど、



実はもっと根が深いものだ、と気づくのにかなりの時間がかかってしまった。





田嶋先生にはああ言ったものの、終始気分が晴れなかった僕は、美術部の活動を早々に切り上げた。





美術室のある別館から職員室のある本館に通ずる廊下を歩いていると、



ちょうどそこから見渡せるグランドに野球部の子たちがキャッチボールをしていた。



立ち止まり、何気無く彼らを眺めていると、飛び抜けて背の高い男の子と目が合った。



彼は僕に向けて大きく手を振りながら叫んだ。



京「せんせー!今、そっち行くんで、ちょっとそこで待ってて下さいねー!」



京四郎くんてばどうしたの?一体?



目を細めながらその姿を眺めていると、グローブを着けたままこちらに向かって走ってきた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ