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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第14章 迷宮の中で



「どうしたの?そんな急いで?」



野球部が練習している場所からここまではかなりの距離なのに、息を少しも乱していない京四郎くんはやっぱり若いんだな?と、少し卑屈になる。



京「さっき、にーちゃんから電話があって、今日時間があるならご飯一緒にどーですか、って?」


「慎之介くんが?どうして京四郎くんの携帯に?」

京「そんなこと分かんないっす。用があるんなら直接かけろ、って言っても聞かなくて?」


「分かった。僕から電話しとく。」


京「ついでに、直接かけろ、って言ってやってください。」


「…そうするよ。」




遠くから京四郎くんを呼ぶ声に返事をしながらまた、と元来た道を全力で走っていった。





「………。」



どうして…?



確か、僕とご飯を食べたい、って言ってきたのは慎之介くんの筈なのに、



圭「もしかして…怒ってる?」



当の慎之介くんは圭太の隣で僕にペコペコ謝っていた。



「………。」



無言で生ビールをわざと音を立てながら喉に流し込み、僕ははーっと息を吐いた。



圭「ごめん。こうでもしないと来てくれない、と思ったから…」



チビチビと飲んでいるせいで全然減っていないジョッキの陰に体を隠すように圭太は僕を見た。



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