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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第14章 迷宮の中で



慎「千陽先生、すいません。騙すようなことして?」


「別にいいけど…で?何?」


圭「え?」


「話があるんでしょ?」


圭「あ……うん。この間のことだけど…」



相変わらずチラチラと僕の顔色を伺うように見ている。



慎「あ…俺、いない方が…」


圭「あっ…そ、そうだな?」


「いいよ?別に。」



僕の残り少ないジョッキが空になったのを見て、慎之介くんが慌てて追加オーダーをしてくれた。



「それで?」


圭「あ…あの時の彼女は…彼女とはもうとっくの昔に終わってて…別れて以来会ったのは初めてなんだ。」



運ばれてきた生ビールを一口飲む。



圭「だからあれはホントに偶然のことで…」


「分かった。もういいよ。」


圭「え?」


「慎之介くん。悪いけど外してもらえないかな?」


慎「へっ?あっ、そりゃあもう…」



ごゆっくり、と、僕に頭を下げ、圭太には神妙な顔つきで肩をぽんぽんと叩きながら僕らに背を向けた。


「あ、慎之介くん。」


慎「あっ!!はっ、はい!!何でしょう?」



大袈裟なぐらいに肩をビクっとさせ、恐る恐る僕を見る。



「僕に用事がある時は直接僕に言ってね?京四郎くん、怒ってたよ?」


慎「すっ、すいません!!そうします。」



じゃ、ごゆっくり、と慎之介くんは直角に腰を折り帰っていった。


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