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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第14章 迷宮の中で



圭「あの…まだ怒ってる?」



慎之介くんを帰らせてから一言も言葉を発しない僕に圭太が恐る恐る声をかけてくる。



「そのことは…もう…。」



もう、いいんだけど…



圭「どうかした?」



いつも空気で僕の気持ちを察してくれる。



元カノと遭遇し、動揺して壊れかけてた僕を黙って受け止めてくれたりと、



本当は年上の僕が圭太を受け止めてあげなきゃいけないのに。



「圭太は…イヤにならない?」



同性で、年上のくせに甘ったれでワガママで、



いつまでも平行線上にしか存在しない僕との関係が。



「こんな…僕のことを…。」



初めは不思議そうな顔をしていたけど、



あの、僕の大好きな子どもみたいな笑顔で僕の手をぎゅっと握りしめた。



圭「全然、イヤじゃないよ?」


「けい…」


圭「イヤじゃないから側にいるんじゃん。」



握られた指先から伝わる温もりに涙が零れた。



圭「ワガママなところも、すぐヤキモチを焼くところも、全部引っくるめてあなたなんだから。」


「うん……。」



思い出したようにジーンズの尻ポケットに手を伸ばし、何かを取り出した。



「俺…就職決まったんだ。」



だからそのお祝い、と、



僕の腕に細いゴールドのチェーンを付けてくれた。

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