
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第15章 訪れる危機
遅れてやってきた挙げ句、招かざる客まで連れてきた諸悪の根元が両手にカップを持って此方に歩いてきて凛々子の目の前にカップを差し出した。
凛「どこ行くの?」
「帰るんだよ。」
凛々子がカップを受けとるところを見届けてから席を立つ。
凛「あの人、何者?」
「あの人?」
凛「あの綺麗な美術のセンセ。確か…島崎千陽さん、っていったっけ?」
「何者…って、お前聞いてただろ?京四郎の学校で美術の先生してる、って?」
凛「それだけ?」
「どういう意味だよ?」
無言でコーヒーを啜る凛々子の横顔に釘付けになる。
凛「それだけの関係の人とあんないいレストランであんな豪華な食事をするの?」
「…か、関係ねぇだろ?」
凛「だって、まるでデートでもしてるみたいだったから。」
凛々子の言葉に、俺同様、凛々子の向こう隣に座った慎之介もカップを咥えたまま固まっている。
「へ、へぇ、だとしたら何?」
凛「別に?圭太ってば男でもイケるんだ、と思って?」
さてと、と、凛々子がテーブルに両手をついて立ち上がる。
凛「お邪魔しました。」
と、丁寧にお辞儀し立ち去ってゆく。
アホみたいにカップを咥えたままの慎之介と目が合うと、これ見よがしに息を吐きまた腰を下ろした。
