
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第15章 訪れる危機
慎「あの…直江圭太くん?」
俺が目だけで声の主を見やると、そいつは慌てて顔を逸らしてコーヒーを煽り、テーブルに顔を擦り付けるように頭を下げた。
「何で連れてきた?」
慎「…すまん。」
「何で凛々子を連れてきたのか、って聞いてんだけど?」
慎「いや…その…家を出る前にアイツが家に来て、今から出掛けっから、って言ったらどこ行くんだ、って、しつけぇのなんの…」
「…で、そのままついてきた、ってか?」
慎「そ、そうなんだよ!」
未だヘラヘラしている感じの慎之介にムカついた俺は、ヤツの襟を締め上げた。
慎「ち…ちょっ…ちょっと待て、って!」
舌打ちし、息も絶え絶えに助けを乞う慎之介を解放してやる。
「何で上手く巻けなかっんだよ?」
慎「んなこと言ったってよぉ…。」
あー、苦しかった、と、やっぱり反省の色が見えない慎之介は椅子に深く腰掛大きくを吐いた。
慎「でもさ、さっき凛々子が言ってたけど、アイツが千陽さんとのデート現場に踏み込んだ、ってホントか?」
「慎之介、お前な…。」
その浮気現場を押さえられたみたいな言い方…
人目があることで、俺は目の前の悪友に振り下ろすはずの拳を収めた。
