
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第15章 訪れる危機
「分かってるよ、そんなこと…」
そうだ。元はと言えば俺から凛々子に猛プッシュし落とした。
あの時は兄貴が、あんなことになるなんて夢にも思っていなかった頃の話だ。
だから、昔みたいに、甲子園に行くのだとか、メジャーリーガーになりたいのだ、とかの夢がまだあった頃の話なんだ。
今の俺は、もう兄貴はいないのだから現実を見ろ、と両親に言われて野球を辞め、したくもない勉強をして地元では名の知れた進学校に入った。
でも、元々勉強がキライだった俺は授業についていけずに落ちこぼれていって、悪い仲間とつるむようになっていった。
当時、凛々子とはとっくに別れてて、もう、何人目か分からない女が俺の隣にいた。
その数ももう、両手じゃ収まりきらなくて、顔も名前も覚えちゃいない。
俺にとって女という存在は、諦めた夢の分、心の隙間を埋めてくれる存在に過ぎなかった。
「何もお前まで辞める必要なかったのに…」
慎「そんなん、俺の勝手だろが?」
空に向かって吐いた煙の軌跡を目で追った。
慎「別に俺がやってなくても俺には京四郎、っていう、将来有望な弟がいるからな?」
