
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第15章 訪れる危機
別に、勿体ぶってる訳じゃなかったけど、
自分の吐いた煙が風に流され、やがて消えて無くなるまでずっと考えていた。
こんなこと、お前に言ったら、どんな顔すんだろな?って。
「…いいよ。」
圭「ワリぃな?」
「その代わり…」
ほぼフィルター部分だけになったタバコを足元に落として踏み潰す。
「千陽さんとヤらせてくれたらな?」
圭「え?」
口にしてしまってから俺は、激しく後悔した。
やっぱ、やめときゃよかった、って。
でも、今さら口をついて出てしまった言葉は取り消せる訳もなく、
二の句も繋げずにいる圭太の顔を見るのが恐ろしくて俺は、
足元で段々その形を失っていく憐れな吸殻をずっと見ていた。
そして、最早足元にある原型を留めていないそれを足先で払い、恐る恐る顔を上げ、
「なーんて?俺がそんなこと言うわけないだろ?」
呆れるぐらい能天気な俺を演じてみせた。
圭「ったく…脅かすなよ?」
「俺のタイプ、知ってるだろが!?エロくて胸と尻のデカいオネェさまだって?」
豪快に笑いながら「悪友」の肩をバシバシ叩いた。
でもさ、俺、思ったんだよ。
今の言葉、マジだ、って言ったらお前、俺のことどうすんのかな?って。
俺がそんな邪なこと考えてる、って知ったらあの人は…
あの人はきっと、俺のこと軽蔑するんだろな?って。
