
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第17章 甘くて苦い媚薬
圭太side
「どう?気に入った?」
さっきまで、興味深そうにあちこち見て回っていて、今はベランダで寛いでいる千陽さんに声をかけた。
千「ここ、家賃高いでしょ?何なら僕が出そうか?」
「そう言うと思った。でも俺が見つけたとこだし、半分は俺が出すよ?」
千「そう?」
風で乱れた前髪を直す指先を目で追いかける。
「あのさ、千陽さん。実はここ、ペット飼えるんだ。」
千「え?」
「慎之介の店のお客さんで仔猫、譲ってくれる、って人がいるんだけど。もし、飼うんだったら…」
千「飼う!飼いたい♪」
「じゃあ…決まりね?」
千「圭太…」
手摺に置いた俺の手に重なる千陽さんの手。
千「…ありがと。探すの大変だったでしょ?」
「全然。これぐらいで喜んでくれるなら。」
重ねられた手を返して握り返すと、金色のチェーンが千陽さんの手首でさらりと揺れた。
「あの…千陽さ……」
言葉を遮るようにポケットでスマホが鳴動した。
慎之介だったら文句を言ってやろう、と息巻いてパネルを見ると、見たこともない数字が並んでいた。
誰だ…?
恐る恐るスマホを耳に当てる。
不思議そうにこちらを見る千陽さんから離れて相手に呼びかけた。
『ごめんね?もしかしてお取り込み中だったかしら?』
な…何で?
