
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第17章 甘くて苦い媚薬
凜『ふーん、残念。』
気が変わったら連絡して?と、電話は切れた。
……あなたが愛してやまない千陽センセ、って、ホントにあなただけなのかしら?……
電話が切れた後も、動揺する俺を嘲笑うかのように凛々子の声が頭の中を旋回する。
……お付き合いしてるのはあなただけなのかしら、ってことよ?……
そんなこと…そんなことあるわけ…
……千陽さんも一応、あなたと同じ男よね?……
………それ、って、まさか、
千陽さんが女と…?
…いや、千陽さんに限ってそんなこと…
追い払っても追い払っても凛々子の吐いた言葉が、俺の頭の回りをハエのように飛び回る。
千「圭太……?」
心配そうに覗き込んでくる千陽さんの顔を間近に見たら、いつの間にか凛々子の言葉なんて頭の隅っこに追いやられていて、
その細くて儚い体を、思いっきり抱きしめた。
千「圭太、苦しい…」
苦しそうでいて、でも腕の中で甘く微笑むその姿は、砂糖菓子のように影かたちもなく溶けてなくなりそうで…
「も…少しこのままで…。」
千「う…うん…。」
千陽さん…お願い…
このまま、俺の前から消えてなくならないで…。
