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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第18章 Pure White



「答える必要ないと思うけど?」



スマホをしまい、お握りを頬張る隣で、加納雅が忍び笑う。



雅「だってその猫ちゃん、お二人の子どもの代わり、ってことでしょ?」


「え……?」



彼女は教室の隅にあるゴミ箱目掛けて紙パックを思い切り投げた。



でも、到底入るはずのない距離。



彼女はため息をつきながら立ち上がり、中途半端な場所に転がる紙パックをゴミ箱に投げ入れた。



雅「彼氏さんも必死ね?千陽さんの気持ちを繋ぎ止めて置きたいがためにわざわざペットの飼える部屋探したりして?」



振り返り僕を見て笑う。



哀しそうに笑う。



雅「いくら愛し合ってる、っていっても絶対に子どもなんて望めないから…」



…知ってる。そんなこと。



雅「私も……あなたも……。」



神さまの采配に逆らった想いを抱いたあの日から。



だから、離れようと思った。



でも、そのたびに何度も何度も絆されてここまできたけど、



段々と離れるのが怖くなってる。



必死なのは圭太じゃなくてむしろ僕だ。



圭太が好きな色の瞳を持つ猫を側に置き、



圭太が好きな色の花を描く。






君がずっと僕のことを好きでいてくれるように。



君にずっと愛される僕でいるために……。


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