
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第18章 Pure White
千「ごめんね、慎之介くん。ベルのこと。」
「いいよ、別に?こうしてしょっちゅう様子、見に来てくれんなら?」
腕の中で気持ち良さそうに目を細めるベルの頭を撫でながら、何度めかのため息を付く。
何だ?さっきから。
圭太とうまくいってねぇのか?
「何か悩んでる?」
千「え?どうして?」
「さっきからため息ばっかだから。」
ああ、と、ベルの赤い首輪についた鈴を指先でチリン、と鳴らした。
千「うん、ちょっと…」
初めは、話していいものかどうしようか迷う素振りを見せたものの、
実はある人から肖像画を頼まれてて、引き受けたものの、その作業をする場所で悩んでいるのだ、と。
「千陽さんちじゃダメなの?」
千「それはそれでちょっと問題が…」
よく話を聞いてみると…。
「え?学校の生徒?」
千「…うん。」
しかも、女子だって?
いかに千陽さんが女に興味がない、とは言え、それはバレたらバレたで問題だろう。
ましてや、その女子生徒をモデルに絵を描くんなら、密室に二人っきりになるだろうから。
じゃ、何だってそんな面倒なこと引き受けたんだろ?
千「何か…彼女のこと描きたい、って思っちゃったんだよね?」
気のせいかな?
千陽さんの顔、圭太と一緒にいる時とおんなじ顔してるような…。
