ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第3章 マドンナ・ブルー ②
「へ、変なこと言わないでください!」
「ごめんごめん。イヤなこと思い出させちゃって?」
先輩はぽんぽんと僕の肩を叩くと、品出しの続きを始めた。
やっぱり…あの子もそう…だったのかな?
そう言えば、ここでバイトを始めたばかりの頃は男の人によく声をかけられたっけ。
中には付き合ってほしい、と言ってくる人までいたし。
そのたびに、自分は男だから、と言って断っていたけど、
それでも構わない、って人もいたから、ほんと、断るのに苦労したなあ。
「………。」
あの子も…
その類いだったのかな…?
そんなことに思いを巡らせていると、不意に誰かが僕の肩に手を置いた。
「ひゃっ!!」
「な、何て声を出すんだ?ビックリするじゃないか!?」
店長だった。
「す、すいません。」
「店長、ダメですよ!?島崎くんにセクハラしちゃ?いくら奥さんとうまくいってないから、って!?」
少し離れた場所で、作業をしながら先輩がニヤニヤしていた。
「何言ってるの?するわけないでしょ?そんなこと?君も変なこと言ってないで、早く帰りなさい。」
「あら、もう、こんな時間?」
「あ、あと僕がやっておきますから。」
と、先輩から引き継いだ作業の続きを始めた。