
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第18章 Pure White
千「美人って?僕が?」
「そう!絶世の美女…あ、美男子か?」
あはは、と無邪気に声を立てて笑う。
ヤバいな…このままだと俺…
その時だった。
千陽さんの腕の中で微睡んでいたベルがヒョイと飛び降り、俺と千陽さんの間に座った。
千「ん?ベル、どうしたの?」
俺を見つめる透明な青い目。
ベルはニャア、と、か細い声で鳴くと喉を鳴らしながら俺の手に頬擦りしてきた。
千「ふふっ。ベル、ってばどうしたの、急に?慎之介くんに甘えたりして?」
「腹減ったのかな?」
俺を慰めてるつもりか?この猫かぶり?
自分から擦り寄ってきたのをいいことに抱き上げてやるとまた、小さな体で毛を逆立てて俺を引っ掻いた。
テメ……
千「こら、ベル!やめなさい。」
慌ててベルを抱き上げてめっ、と叱る。
「………。」
何でかな?
何でなんだろう?
どうしてこの人だったんだろう?
死んだお袋みたいな、昔、惚れた女みたいな綺麗な手をしてる、ってだけで。
ま、いっか、そんなことは。
好きになっちまったんだからしょうがない。
圭太、ごめんな?
俺、やっぱこの人がいい。
どんなきたねぇ手を使っても俺は…
この人が欲しい。
