
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第18章 Pure White
僕を祖父母に引き合わせた後、着替えてくるからと彼女は自室へ姿を消した。
「先生、申し訳ありませんね?孫が無理を言ったようで。」
「どうぞ。お構い無く。」
僕の目の前に、まるでヨーロッパの貴族が使っていそうな豪奢な色柄のカップを置いた後、
優雅な物腰の老婦人が、優しそうに微笑む老人の隣に腰かけた。
「お紅茶ですけどよかったかしら?」
「あっ…はあ…」
場違いなところに来てしまったみたいで恐縮してしまう。
「やっと絵を描いて下さる方が見つかった、って言うから、どんな先生かと思ったらこんなお若い先生だったなんて?」
「え?」
探してた?
「いえね、海外にいる母親に自分の肖像画を贈るんだ、って言って。」
「お母さんに?」
「あの子が幼い頃からずっと仕事で海外にいましてね。」
「と言うことは、お孫さんのご両親は揃って海外に?」
「それは…」
突如、言葉を濁し、カップを口に持ってゆく。
ご夫婦が再び口を開きかけた時、白のワンピースに薄いピンクのカーディガンを羽織った彼女が姿を現した。
雅「お待たせ、『島崎先生』?」
行きましょ?と微笑みかける彼女に促され、
重い表情のままの二人に頭を下げてリビングを出た。
