
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第19章 二人と一匹な日々。
言葉は話せないけど話なら聞けるよ?と言うみたいに青い瞳がじっとこちらを見つめる。
「お前、ホント、人間みたいだな?」
でも、喉を撫でてやるとゴロゴロと鳴らすあたりはやっぱ猫なんだな?と苦笑する。
「お前さ、ご主人様と一緒にどこ行ってんだ?」
俺を見上げながらベルが小さな声で鳴いた。
「ニャア、じゃ分かんねぇよ…」
もっと撫でてくれと、擦り寄ってくるベルの頭を撫でてやると、ベルは気持ち良さそうに俺の膝の中で丸まった。
コイツ、もしかして俺のこと慰めてくれてんのかな?
いつもなら、遊んで欲しいときは俺、まったりしたい時は千陽さんの膝の上、って使い分けているくせに…
俺は名前の由来通り、艶々して触り心地が抜群にいいコイツの体をしばらく撫でていた。
撫でながら、ふと、思う。
コイツがもし人間ならどんな女なんだろって?
スケベ心からでも何でもなくて思ってしまった。
空気が読めて気まぐれで、
青い目の真っ黒な猫。
千陽さんが言うところの「青い目の美少女」も中々だけど、
慎之介の「青い目の小悪魔」、ってのも的を射てるな、って思った。
突然、何を思ったのか、膝の中で丸まっていたベルが立ち上がり膝の中から出ていってしまう。
振り向きもせずすたすたと歩いていって、
やがて、暗闇の中に溶け込むように消えてしまった。
