テキストサイズ

ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第20章 美少女の秘密



僕は老婦人とアトリエがわりに使わせてもらっている二階の部屋へと向かった。



この部屋は普段から鍵が掛けられてはいるが、貴重品があるわけでもないし、この家の人たちも自由に出入り出来るようになっている。



「ちょっと待ってて下さいね?」



僕は持参した画材を床に置き、絵に掛かった白い布を外した。



「まあ……」



老婦人は目を見はった。



「この子、一体どこからこの服を……?」


「え?」


「あ……いえ。何でも…。」



老婦人は狼狽えかぶりを振り、再び絵に目を向け微笑んだ。



「それにしても…」



何て…



「…大胆な絵ですこと。」



何て悲しそうな顔。



「…すみません。雅さんがどうしてもベルと一緒に描いて欲しい、って言うものですから。」


「…そうでしたか?こんな個性的な配色、先生のイメージからは全く想像出来なかったものですから。」


「はあ…」



そう言って僕に向けられる笑顔はやはりどこが寂しげで、



彼女たちの間に聳え立つ見えない壁を感じた。



「あ、ごめんなさい。私としたことが。創作のお邪魔でしたわね?」


「いえ、とんでもない!こんな拙い作品を見て頂けた上に誉めていただいて…」



お邪魔しました、と老婦人はゆっくり腰を折り部屋を出ていった。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ