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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第20章 美少女の秘密



「誰と会ってたか、なんて聞いてもいいのかな?」


雅「私が一方的に好意を寄せてる人。」


「え?片想い、ってこと?」


雅「そう。」


「恋人とデートしてたのかと思った。」



恋人、と聞いて彼女は少し複雑そうな顔をし、僕の腕の中で微睡むベルの顎を指先で撫でた。



雅「だったらよかったんだけど…。」



でも、その寂しそうに笑う顔はさらに彼女の美しさを際立たせていて、



僕は思わず息を飲んだ。



突然、憂いと儚さを帯びた切れ長の黒い瞳がこちらに向けられて、僕は反射的に顔を逸らした。



雅「千陽さん?」


「な…何?」


雅「熱でもある?」


「ど、どうして?」


雅「だって、顔…赤いから。」


「あ……っ」



不意に、自分に向けて伸ばされた彼女の白い手に、思わず後ずさる。



「ご…ごめん。ホントに何でもないから。」


雅「そう?」



不思議そうに僕を見つめた後、ふっと視線を外してまたベルの頭を撫でた。



少し伏せた瞼を彩る睫毛が落とす影にしばし見惚れていたけど、



また、どうして自分を見ていたのか、などと彼女に追及されないように素早く逸らした。



雅「それはそうと、もうすぐだね?」


「えっ?」


雅「絵。」


「あっ、ああ、そうだね?」


雅「何がいい?」


「何がいい、って?」


雅「絵のお礼。やっぱ、お金の方がいいよね?」

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