
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第20章 美少女の秘密
「ただいま…」
窓から僅かに差し込む明るさを頼りに電気のスイッチを入れる。
「今、ゴハンあげるからね?」
部屋に入った途端に落ち付かなげに鳴くベルをキャリーケースから出し、僕の足元に座る彼女の目の前にフードの入った皿を置いた。
圭太、今日は遅いのかな?
絵を描きに行く日はいつも圭太の方が帰りは早い。
今日は…どうしたのかな?
ガツガツとフードを掻き込むベルの側にしゃがみ込み頭をなでた。
もしかしたら携帯に連絡が来てるかもしれない、と手にした途端、玄関のチャイムが鳴った。
圭「ただいま…」
「お帰り。今日は遅かったんだね?」
圭「そういう千陽さんは早かったんだね?」
圭太の呼気から仄かに漂うアルコールの香り。
気にはなったけど、肖像画を描きに出掛けていることを内緒にしている負い目から理由を聞くことができない。
「ごはん…どうする?」
恐る恐る顔を覗き込むようにして聞いてみると虚ろな目で見返された。
圭「食ってきたからいい。千陽さんは?」
「まだ…だけど…?」
圭「ね…千陽さん。」
「何?」
酔いのせいでとろんとした圭太の目。
でも、それが見る間にギラついた欲望を纏ってゆく。
圭「ヤろ?」
「え…あ…あの…ちょっ…!!」
玄関先でそのまま押し倒されてしまった。
