
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第21章 薔薇と百合の一夜 ①
雅「イッちゃった。ゴメンね?」
肩で息しながら、その憎まれ口を叩く少女を睨み返す。
雅「…怖い顔しちゃって。」
うっすらと微笑を湛えながら僕の顔を覗き込むその顔に、ギリと唇を噛みしめた。
「その話…なかったことにしてくれるかな?」
雅「は?」
「聞こえなかったの?なかったことに…」
雅「…いいの?そんなこと言って?」
「え?」
突然立ち上がると、彼女は自分の制服のブラウスに手をかけ左右に引き裂いた。
「なっ…?」
雅「…大声出すわよ?いいの?」
「加納さ……?」
雅「犯されそうになった、って、言っていいの?」
「ちょっ…ちょっと待って!!」
慌ててその手を制する。
雅「…離して。」
「悪いけど、そんなことをしたって君を抱くことは出来ない。」
雅「ふ…怖いの?」
悲しそうに、だが自嘲気味に笑う。
「違う…」
雅「…違わない。」
「知ってるだろ?僕が同性愛者だって?」
雅「それが何?私の好きな人も同性よ?」
「だったらなおさら…」
雅「…だからよ?だからあなたじゃなきゃダメなの!!どうして…どうして分かってくれないの!?」
黒い…
大きな瞳から零れ落ちる涙。
雅「苦しいの…」
「加納さん…」
同じ………僕も。
雅「助けて……」
やがて、嗚咽が漏れ始めたその細い体を僕は、
力一杯抱きしめた。
