
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第21章 薔薇と百合の一夜 ①
「僕はあとでいいよ?お先にどうぞ?」
雅「…逃げたりしない?」
脱いだ上着を掛けようとハンガーに手を伸ばす。
「…逃げないよ。」
雅「…ホントに?」
「君こそ…」
雅「自分から誘っといてそんなことするわけないじゃない?」
「本当に?」
足音を忍ばせ近づき、背後から彼女の肩を抱くと、彼女の体は大袈裟なぐらいびくりと跳ねた。
「引き返すなら今のうちだよ?」
雅「引き返すなんて…」
突然、振り返ったと思ったら、頭を乱暴に押さえつけられ噛みつくように唇を奪われる。
「ふっ……ぅっ…んっ」
今ではそれさえも心地よくて、しばらくの間互いの滑った粘膜を互いの舌で嬲り合っていた。
雅「じゃあ…先に使うね?」
「…うん。」
絡まった視線の先で、僕らの唇を繋いでいた銀色の糸がぷつりと切れた。
待ってて?と、華奢な肢体がバスルームに消えるのを見届けてから天蓋付きのベッドに横たわる。
薄ピンク色のレースの天蓋に覆われたベッドに、目を閉じ、仰向けで。
どれくらいの間、そうしていたのだろう。
フワリ、と、僕の体の上に覆い被さる気配がして慌てて目を開けると、
すぐ目の前で笑う彼女と目が合った。
