
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第22章 薔薇と百合の一夜 ②
雅「はあ…想像以上だった。」
僕は彼女が洗面所で口を濯いでいる間に汚れた箇所をティッシュで拭いた。
「だからやめろ、って言ったのに。」
雅「だって…あんなに苦いなんて思わなかったんだもん。」
僕は子供みたいに唇を尖らせる彼女に苦笑し、洗面所から出て来た彼女が側に座るのを見計らってから立ち上がった。
雅「どこ行くの?」
「シャワー。心配しなくても逃げないから。」
僕の手を掴み、不安そうに見つめる瞳にそう返した。
雅「…分かった。」
安心したように笑う彼女の頭をくしゃりと撫でバスルームへと向かう。
さっきのやり取り、まるで恋人同士みたい…
少し擽ったさを感じながらも僕は、
何処か、圭太への後ろめたさをも感じていた。
圭太とは、あの日以来まともに口を利いていなかった。
口を利いていないどころか、目も合わせていない。
あの、乱暴に抱かれた夜からずっと。
悪いのは自分だ、って分かってる。
いくら悪気がなかったとはいえ、教え子と会っていたことを隠していた。
怒らない方がどうかしてる。
圭太…ごめん。
脳裏を掠める圭太の笑顔を打ち消すように僕は、
少し熱めのシャワーを勢いよく頭から被った。
